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 このノートブックは、深見友紀子が原告となった裁判・最高裁パートナー婚解消訴訟の補足説明としてスタートしました。裁判の内容を知らないと理解しにくい文章があると思いますので、興味のある方は、下記サイトまでアクセスしてくださいますようお願いします。
http://www.partner-marriage.info/

 2009年以降のノートブックは、「ワーキング・ノートブック」に移転しました。

2週間後、まとめてアップロードします。

 明日からパートナーのSさんとイタリアを廻ってきます。二人の関係が続く限り、毎年2週間、航空運賃もそれほど高くなく、まだ互いの大学が夏休みのこの時期に旅行しようと決めて、これで3回目。
 帰国したら、この裁判に関する法律各誌の解説に対する感想をアップする予定です。ノートブックもいくつか更新するつもりです。

 私が死ぬと、私の所有する新宿区の土地・建物、預貯金のすべては、私の実子ふたりが相続することになりますが、今、12歳の長男を育てているのは、最高裁で闘った相手です。結論がでないまま、先ほどそのすべてを法定相続人以外の人に譲るという書面を作りました。
 
 パートナー婚の破綻は、恋人同士が破綻したのと決して同じではありません。この続きはまた・・。


あっちをたてれば、こっちがたたず

 平成17年の上半期、前年度の同期間と比べてさらに子どもの数が減ったらしい。今年の夏、妊娠している女性たちが街のなかで目立っていたので、少子化対策も効果が出てきたのかなと思っていた私には予想外の数値だった。
以下がそのグラフ。

厚生労働省:「人口動態統計速報」平成17年6月分

 年金制度などが破綻しそうだから始められた少子化対策だったはず。でも、子どもの数は増えないまま、生まれてきた子どもは全員保育園に入れるようになり、延長保育、24時間保育とどんどんと拡大し、子育てに関して日本は共産国家でも目指すのかな。私が子どもを産んだ16年と13年前、もしこうした国家が実現していたら、「私は産むだけ」という特殊な宣言をしなくても済んだかもしれないな。

 でも・・・・
 わずかな助成金で夜間保育を強要されている保育園は今悲鳴をあげている。そこで働く人たちの労働環境はどうでもいいの? 彼女たちの中には働くお母さんもいるのに。労働環境が悪い若い世代の増加は、結婚そのものができにくくなるため少子化につながるのではなかったの?
 
 子育て支援NPOなどで働く子育て経験者の女性たちの賃金はどうなっているの? ボランティアやボランティアに近い低賃金労働者に甘んじろというわけ?安定した収入をもち、休業補償を満喫している女性たちの子どもの面倒を、経済的に恵まれないボランティア女性がみる・・ホントにそれでいいの?

 私は音楽教育の研究者でよかったなと思う。もし、子育ての社会化や女性の労働問題の専門家だったら、あっちをたてれば、こっちがたたずで、頭が割れそうだ。


・・・関連記事・・・
児童施設を集中整備へ=子育て支援で予算6割増-厚労省

 厚生労働省は22日、児童福祉施設を整備する地方自治体を財政支援する次世代育成支援対策施設整備交付金を、2006年度に大幅に増やす方針を固めた。待機児童を解消するための保育所整備など、子育てをしやすい環境づくりに集中的に取り組む。同年度予算概算要求に前年度(167億円)比6割増の270億円程度を盛り込む。
 政府は04年12月、今後5年間の「子ども・子育て応援プラン」を策定。数値目標として(1)保育所の受け入れ児童数を04年度の203万人から09年度に215万人に拡大(2)虐待・非行問題に対応する児童家庭支援センターを04年度の51カ所から09年度には100カ所に増設-などを掲げた。
 厚労省は交付金を活用し、目標達成に向けて各児童施設の設置数を全国的に底上げする考えだが、05年度の場合、交付金で対応できる予算の2.5倍近い要望が自治体から寄せられ、ニーズに十分応えられていないのが実情だ。
 同省は、日本の総人口が06年をピークに減少に転じると見込まれる中、住民が必要とする子育て支援サービスを自治体が提供できない状況が続くと、政府全体の少子化対策にも影響を及ばすと判断した。06年度予算に計上する交付金を大幅に増額することで、環境整備に努める考え。 (了)
(時事通信) - 8月23日12時56分更新


パートタイム就労か、ピアノ教師をやるなら理想的?

 自由民主党の政策研修叢書「日本型福祉社会」(1979年)には、典型的なA氏のライフスタイルが書いてあるらしい。

http://www2.aasa.ac.jp/people/nyuu/siryou2.pdf

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 A氏夫人は35歳にして子育てが一段落して暇になって男性の場合の老後に近いライフステージに入る。この早すぎる老後に彼女が家庭外に出るとしても女性は組織の一員として組織の管理に関係するような役割を演じるのに向いていないから(!)パートタイム就労か、ピアノ教師でもするなら理想的である。A氏夫人が外出しやすくするためにも、親世代との同居ないし近居によって二つの家庭を合体ないし連結し、より安全性の高い家庭を作るよう工夫するのが賢明であろう。
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 1993年、2人目の子どもを産んだとき、私は大学院を出て2年目の35歳のピアノ教師だった。子どもの父とは合意の上で別居し、別経済。当時、親世代はそれぞれ静岡と大阪にいた。

 つまり、上の自由民主党の文章によれば、“安全性のすこぶる低い家庭”だったし、すでに私は女としては“早すぎる老後”の年齢になっていたということになる。

 http://www.partner-marriage.info/c4.html

 音大出身の妻が一週間のうち数日、あわせて10人程度の子どもにピアノを教えているとしよう。一人の月謝を1万円として月10万だ。夫が一杯稼いでくれて、生活の心配をすることなくその10万円で洋服だとかバッグだとかを買うのなら優雅だろうけど、世帯主の仕事だとしたらフリーターそのものだし、就業形態としては内職そのもの。

 何としても私は組織の管理に関係するような役割に就きたい!!!!!!!

 “早すぎる老後”の年齢の私が育児をしていたのではそれは不可能であると感じたので、これも合意の上で私は“義務としての”育児はしないという約束をした。(両立している女や、40歳過ぎてから始めたことで成功した女がいるよ、と幾つかの事例を挙げて私を批判する人たちは、その数万倍、仕事ができなくなってしまった女がいる事実には目をつぶって知らないふりをしているか、本当に知らないのだ!)
 39歳の春、地方の国立大学の助教授になった。
 そして昨春、今の大学の教授になった。


 でも、私は今でも週末はピアノ教師です。大好きな仕事なので、大学がどんなに忙しくなってもこの仕事は続けるつもりです。

http://www.ongakukyouiku.com/music-lab/index.html

 「パートタイム就労か、ピアノ教師でもするなら理想的である。」ということですが、現実はそんなに甘くありません。近所に生徒募集のチラシを撒いても反応はゼロに近い。新規の生徒のほとんどは口コミでしか入ってこないという情けない状態なんですよ。

 一般の人々は、音大のピアノ科を出てピアノを教えて食べれる人の少なさを知っているのかしら。投資と回収という点からすれば料理のほうがよほど儲かるし、うまくいけば「カリスマ主婦」になれると友人のピアノ教師たちがぼやいています(笑)。


私の少子化対策

 日経新聞8月13日夕刊に小長谷有紀さんのウィットに富んだ文章が載っていた。

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 個人的な少子化対策 
       国立民族学博物館教授 小長谷有紀

 むかしむかし、私がまだ女子学生だった頃、留学先のモンゴルで親しくなった男子学生から付き合いを申し込まれて「子どもができると困るから」と断わったことがある。すると即座に「産んでいけ! 」と言われた。そのまま勧めに応じていたら、今頃、私はおばあちゃんになっていたかもしれない。
 当時、モンゴルは社会主義のもので積極的な人口増加政策を採っていた。学生の半数を占める女子の大半が母となり、赤ん坊たちは草原に暮らす祖母のもとで養育されていた。一人の女性が生涯で産む子どもの数は6.65人であった。
 市場経済に移行してからは、子育てが経済的負担と感じられるようになり、みるみるうちに合計特殊出生率は下ったものの、いまだ2.27人である。
 子どもが生まれてから入籍するのが一般的で、入籍しても、そもそも父の名をファミリーネームに代えて用いるために母と父と子のファミリーネームはすべて違う。それぞれ子連れで再婚したので、すべての子のファミリーネームが違うという事例も少なくない。すなわち、家族といるのは生活であって、名前ではない。結婚というのは生活であって、制度ではない。
 もちろん、産む、産まないは個人的な選択である。ただし、モンゴルでなら産んでもいいという日本人女性の証言は多く、実践例も多い。となると、社会環境に応じているという意味では社会的選択であろう。だから制度改革は必要であり、それでもまだ十分ではない。
 どう力んでも産めやしない男たちの、育てる心がまえ如何で決まるのだと言っておきたい。
「産んでいけ、僕が育てるから!」と言ってみてよ!

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 私は「産んでいけ、僕が育てるから!」と言われて子どもを産んだ。一度目は16年前、二度目はその3年後。

 モンゴルと違ってここは日本だから、それは“「母による監護の放棄」というべき内容で、「出産請負契約」「人身売買」との印象を与えかねない様態”となってしまうらしい。(民事判例研究 第1回 婚姻外男女関係の一方的解消と不法行為責任の成否 立命館大学法学部助教授 本山敦 「法律のひろば」2005年5月号))

 「産んでくれ、君が育てるのなら!」と言われて産まなかった女たちと大違いかといえば、ほとんど違いは無い。私の背後には、子どもを産まなかった多くの女たちがいる。

 でも、私は個人的に少子化対策したわよ!  うふふ。


大学人の二足のわらじ

 文化人類学者で東大教授の船曳建夫さんは仕事と家庭について『大学のエスノグラフィ』(有斐閣)という著書のなかで次のように書いています。長いですが、引用します。

 家庭は研究者の墓場か(p.187)

 研究に家庭は邪魔です。ましてや子育てなど、重荷です。これは結論が出ています。研究者は24時間働いていたいのが基本ですからそれらに差し障ることはみな不要です。それで言えば、家庭は研究者の墓場でしょうか。
 ・・・かつて私は書斎がなかったのと、靴を履いていないと頭がゆるんでものが考えられないため、一週間の内6日間大学に出てきていました。しかし、ある人が「いつ電話かけても大学にいるね、それだと使われちゃうよ」と忠告してくれた・・・・。それでも、大学に行くパターンを崩さなかったのは、自宅に書斎がなかったと、というインフラの問題もさることながら、家庭に帰ったら四人の子どもの育児、という問題があったためです。
 ビジネスや他の多くの仕事をする人にとって家庭は心の安らぎの場であったり、子どもがあとを継ぐことで自分自身の仕事が強化されたり、とよい面があります。それに対して宗教と学問(芸術もかなりの点で)、その本質上、世俗の快楽や家庭から遠いのですね。手短に言えば、研究は高度の集中力と持続力を必要とし、その核心部分には孤独な作業が来る。「家庭生活」や世俗のつきあいはじゃまになる。
 そしてこれらの仕事は家庭の中で子に継がすようなものではない。書斎を渡せば子が学者になれるわけではないし、絵筆を父から受け継げば画家になれるようなものではない。親から才能を受け継いで親のように学者や芸術家になっている人もいますが、それは宗教や学問といった仕事の、本来の性格から来ているのではないのです。
 ・・・フェルマーの定理に解答を与えたケンブリッジの数学者は既婚者でしたが、その問題を考えている七年間、家庭のこと以外すべてを忘れて没頭した、との発言が伝えられていました。それに対して、彼を知る日本の数学者が、彼に限ってそんなことはない、家庭だって忘れていたに決まっている、と発言していまいしたが、研究者にとっての家庭の問題を言い当てています。
 それでも、・・・研究者が家庭を持つのは、人は研究のみにて生きるにあらずと思うからでしょうし、結婚するときにはどうにか両立できるよと高をくくってしまうからです。そして、この問題、結婚だけでしたら、夫婦そろっておしどり学者で、すこぶる生産性が高くなる場合がありますから、問題は子ども、育児です。
 ・・・実はこの問題は、ジェンダーの問題なのです。かつて研究者といえば男性であることがふつうであったときには、男性が独身を続けることで、時には家庭を持たぬゲイの関係によって性愛の世界と両立させつつ解決していたのですが、現在は女性研究者の問題、またどちらが研究者であれ、家庭での男(夫)・女(妻)のジェンダーの問題なのです。
 ・・・研究と家庭の二足のわらじは、大学が男女の世界になるにつれ、既婚者において複雑さと深刻さを増しつつ、他方で、結婚しない、子を作らない選択が、かつての男性のみの大学世界でもそうであったと同じように拡がると見えます。いまは大学のみならず、「家庭」も大きく変容しつつあり、その2つのあいだの新たな二足のわらじとして問題が変容してきています。

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 私は2001年9月に今のパートナーSさんと知り合いました。
 「パートナー婚解消訴訟」の相手と破局して4ヵ月後のことです。16年の関係が突然終わって打ちひしがれていた私にとって、神様が与えてくれた人なんです。ありがたい!!という気持ちは4年経った今も変わっていません。

 私は自分が産んだ子ども2人とは同居していないので、Sさんとおしどり学者で、すこぶる生産性が高いということになります。それに、私の研究分野は、船曳さんの学問分野のような東大・京大を頂点とするヒエラルキーからは外れた、所詮「ウンパッパッ」←(これ、子どものリズム打ちで、ウンが四分休符、パッが四分音符デス)の世界です。それでも、昨日15時間も格闘したのに、たった5枚の論文が仕上がらないどころか、満足のいく構成さえできませんでした。さらに別の9枚もあるんです。
 そんなわけで、8月15日までにやるはずだった水野紀子さんのパートナー婚解消訴訟の解説 (「平成16年度重要判例解説」(ジュリスト臨時増刊(第1291号)6月10日号、有斐閣)に対する感想はちょっと延期することにします。

 長男を産む際に裁判相手の取り交わした「私は産むのみ。義務としては育てない」という内容の公正証書。
水野さんが公序良俗に反する可能性があると指摘したものですが、34歳でやっと修士を出た私は、産むだけならば自分の研究生活は崩れないと思ったのです。

http://www.partner-marriage.info/c9.html

 その計算に狂いはありませんでした。昨日も三食ともSさんに作ってもらったのに、たった5枚の論文が書けないのですから・・・。
 
 船曳さんの著書によれば、奥さんに秘書をさせている男性研究者も大勢いるらしいですね。
 子育てのシャドウワークを全部妻にやらせて、子どもの発達についての研究を男性研究者がいます。
 私だって、あんな公正証書を取り交わさず、シャドウワークをすべてやってもらって、自分の子どもたちに音楽レッスンだけをしたかったなぁ。


見通しがまったく甘すぎる・・8/13一部修正

8/13一部修正 

「子育て世代の意識と生活」と題する2005年版国民生活白書が出た。
 いつもの通り、ありきたりの提言が書いてある。

(1)所得格差を固定化させないような雇用体系の構築
(2)安価で多様な子育て支援サービスの拡充
(3)民間非営利団体(NPO)を中心にした地域による子育て支援体制の整備

 現在の保育関連の雇用環境を見ていると、“安価で多様な子育て支援サービス”、“民間非営利団体(NPO)を中心にした地域による子育て支援”の拡充は、非正規労働の女性を増やすだけだと思う。そうしたサービスを提供するのは、おそらく結婚前のパート女性、パート・アルバイト同士の夫婦の妻、正社員を夫に持つパート妻がほとんどだろうから。

 (2)(3)と(1)は少なくとも女性に関しては絶対に両立しない。

  また、子供1人の養育費(計22年間)は約1300万円とあるが、森永卓郎さんの著書『〈非婚〉のすすめ』(講談社現代新書)の中に次のような記述がある。

・私立幼稚園、公立小中学校、公立高校、私立文系大学に進学した場合の総教育費は1447万円。これには学校教育費、補習教育費、習い事、小遣い、交通費、サークル等の参加費といった広義の教育費だけが対象となっている。(三和銀行の「子供の教育費に関する調査」(96年4月))
・これらに食費等の生活費が加えられ、約2000万。(93年「厚生白書」)
・出産・育児費用や衣料費、理美容費、パーソナル所有品代にまで広げると、総コストは2933万。(AIUの現代子育て経済考(93年))
・これでも推計から漏れているコストは、家賃と結婚費用である。子供部屋を6畳一間としても22年間のその家賃は760万、結婚費用のうち親からの援助と結納金の合計は384万、一人分としてその半額の192万。これらを合わせると3885万。
・さらに、子育てにかかる人件費コストがある。子供一人あたり投入している時間を計算し、その時間に年齢別の時間当たり賃金を乗じて人件費コストを算出すると、3996万。直接経費に人件費コストを加えた総コストは、7881万。

 これらの統計は10年前のものだし、どの程度の信憑性をもつかわからないけれど、1300万円ではないのは明らかである。
 こんなにお金がかかったうえに、多くの女性が出産・子育てで定職を失い、母性が大切だとか、三歳児神話だとか言われ、不良になれば育て方が悪いと言われたんじゃ、たまったものじゃない。日本の女性たちはまだまだおとなしいのか。何の根拠もなくどうにかなると思っているのか。楽観も度を越すとただの無知だと思う。

 子育てにかかる費用の統計結果を見て多くの人が呆然とするに違いない。でも、京都のお嬢様大学に勤務する傍ら、東京の富裕層の子どもたちにピアノを教えている私は、富裕層の教育費と生活費は上記の算出額では留まらないと思う。もっともっと多いはず。他人の芝生は青いのかな。彼らは子育てを楽しんでいるし、心にも余裕があるように見える。所得格差、資産格差は広がる一方だ。

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子育て負担の軽減を=費用、時間とも余裕なく-05年版国民生活白書

 竹中平蔵経済財政担当相は12日の閣議に、「子育て世代の意識と生活」と題する2005年版国民生活白書を提出した。少子化の背景として、結婚や子育てへの心理的・経済的な負担感が高まっていることを指摘。子育て世代の負担を軽減するには、雇用の多様化や子育て支援サービスの拡充など総合的な対策が必要だと訴えている。 
 結婚や子育ては01年版白書(家族の暮らしと構造改革)でも取り上げられたテーマ。05年版は、将来結婚する若者から大学生の子を持つ親の世代に当たる20代から40代を「子育て世代」と定義し、結婚や子育ての回避・先送りの背景にある「負担感」の実態分析を試みた。
 国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査など複数の意識調査を用い、子育てに消極的な最大の理由は「経済的負担の重さ」と分析。総務省の家計調査を基に内閣府が独自に算出したところ、子供1人の養育費(計22年間)は約1300万円に上った。
 しかし、若年層ではパート・アルバイト同士の夫婦が増加。共働きでも世帯年収が240万円程度しかなく、所得面では明らかに子供を養う余裕がない。所得に余裕のある正社員の共働き夫婦でも、長時間労働の常態化による「時間貧乏」を理由に、子育ての困難な状態が進んでいる可能性が示された。
 このため白書は、少子化対策として(1)所得格差を固定化させないような雇用体系の構築(2)安価で多様な子育て支援サービスの拡充(3)民間非営利団体(NPO)を中心にした地域による子育て支援体制の整備-などを進めるよう提言している。(了)
(時事通信) - 8月12日11時1分更新


正規労働者とパート・天下分け目の闘い

 7月の下旬から京都女子大の児童学科2年生、3年生約250名の実習先保育園を教員11名で分担して廻っている。
 連日の猛暑のなか、かなりの重労働である。
7月29日 兵庫・淡路島1園、8月1日 奈良3園、8月2日 京都1、大阪1園、8月3日 奈良1園、8月6日 京都1園、8月8日 兵庫2園、8月9日 愛媛1園

 教官が学生の実習先を訪問することを巡回指導という。だが実際は挨拶回りに等しい。前任校では小学校・中学校担当だったが、ほとんどやったことがなかった仕事だ。

 公立園の園長は、たいてい働くことに対する意識の高い年輩の女性たちだ。だが、保育士のなかにはパートの人も多い。正規職員とパートとの待遇の格差の問題が、企業と同じように存在している。
 私立では出産したら解雇というところはまだとても多いし、短いサイクルで次々若い人に来てほしいので美人しか採用しないという噂の園もある。「美人のほうが早く結婚するからという理由みたいですよ」と学生が言っていた。結構笑える。

 一昨日訪ねた保育園の男性副園長は、「うちは4大卒は採る予定はないです。短大卒より多く給料を払わなければなりませんし。同い年で2年余分に大学にいたのと、2年実務経験があるのとでは大違いですし」

 2年余分か!

 ムダかなと思ったが、「出産しても続けられますか」と聞いてみた。
 「やめてもらわないと困ります。一年多くいるとそれだけ給料を多く払わなければならないですし。正規職員で年配の保育士を雇う余裕があるのは赤字でもなんとかなる公立だけです」
 「熱があると電話をして迎えにきてもらっています。お母さんは子どものために働いているですから。迎えにくるのはおばあさんでもお姉さんでもいいのですけど」

 子どものために働く、か。自分のために働くというのではアカンのかな。

 この男性が特別男尊女卑というわけではない。大抵の男性の「女性の労働観」はこんなものだろう。

 私立は経営を第一に考える。それも仕方がない。以前私が勤めていた旧国立大学の富山大学では、一学年学部学生183名に対して常勤教員数89名だった。京都女子大の児童学科は、一学年学部学生130名に対して常勤教員数11名である。独法化後、旧国立がそんなに多くの教員を抱えていてやっていけるわけはない、と多くの人が言う。

 築4年のきれいな建物のこの保育園には若い男性の保育士がいた。
 「彼は正規職員なんですか」
 「今年アルバイトで採用した人です。様子をみて正規職員にするかどうかを決めようと思っています。男性の場合は、30才までに主任になれなければ、自然にやめていきます。」

 かつては女だけの職場だったのに、ここにもすでに‘新たな’男性優位がある。

 次に訪ねた保育園は公立で建物も古くて、ほとんどの部屋に冷房もなかった。
 「最近ほとんど採っていなかったのですが、今年は町で2名、保育士・幼稚園教諭を正規採用する予定です」
 「4大でいいのですか」
 「4大が不利ということはまったくありません。町の職員も国公立大の人がほとんどですし」
 公立園でも次第にパートしかとらなくなっている昨今、正規職員は狭き門だ。

 この二つの園を比べたら、若い女性は前者のきれいな保育園のほうがいいと思うのではないかな。でも、絶対に気づいてほしい。公務員には着服などの不祥事が続いているし、公務員だって今後どうなるかわからないけれど、社会が不透明になり、雇用が増えるといってもパートばかりが増えるなかで、まず若い女性たちにはとにかく正規の職員を目指して欲しい。そして、いったん手に入れたそのポジションを簡単には手放さないこと!!

 私が若い頃、こんなことを考えたこともなかった。教えてくれる人もいなかった。
 教員免許さえ取る気がない学生たちに対して、「君たちは演奏や絵で食べていきたいと思っているようだが、君たちが出世して東京芸大の教授になるときに教員免許を持っていることが有利になる。附属高校があるから、そこでも教えられる人を優先する」とか教務課長が言って、手を変え品を変え免許取得を薦めていた。それでも当時免許を取得した芸大生は3分の1ほどだったように記憶している。みんなどこか手堅い道なんてバカにしていた。

 保育園に少しいるだけで、保育園で働く保育士の女性、保育園に子どもを預ける女性の実情がみえてくる。近い将来、非正規労働者の女性が子どもを保育園に預けて働き、非正規労働者の女性保育士がその子どもの世話をするという図になるのではないかと思う。これが政府や一部の識者が進める男女共同参画の姿なのだろうか。

 今年京都市は20名の保育士を採用する。近年にない大量募集である。チャンス!


女の文化の高さが少子化を加速させる

 一般的に、保育園の拡充、地域の子育て支援の充実、男女共同参画の実現が少子化に歯止めをかけると言われているが、果たして本当にそうだろうか。

 きょう、夜間保育をしている保育園の老園長さんにお会いして話を聞く機会があった。京都・大宮六角にお寺の住職でもある方だ。
 「夜間保育をやっている保育園は全国に37、そのうち7つが京都の保育園で、私のところは昭和30年代から夜10時まで預かっています。」京都の保育園の人たちはずっと昔から頑張ってきた。それでも、京都は東京に次いで子どもが生まれない都道府県である。
 病院の小児科の待合室では、お祖父さんやお祖母さんが孫に付き添っているのをみることも多いし、町にはまだまだ昔ながらの風情も、子どもの遊びをサポートする組織もある。仕事柄子育て支援に奮闘している人たちも多くみる。しかし、ワースト2なのだ。
 児童館に勤務する女性が「京都は児童館活動なども充実しているのに、なぜ少子化が進むのでしょう」と嘆く。「東京も京都もまだ子どもを産む年齢には達していない学生が多いからでしょ」と簡単に言ってしまう人たちが保育関係者のなかにもいる。しかし、下宿している学生のほとんどは京都に住民票はないはず。

 「37のうち7つまでが京都なのに、なぜ京都は少子化ワースト2なんでしょうか」と老園長さんに尋ねてみた。彼は「あたってないかもしれへんが、たぶん女の文化が東京、京都の順番に高いのと違うやろか」と話した。“社会進出”ではなく、“共同参画”でもない、“文化”という言葉に私は少し意表をつかれた。

 保育園からの帰り道、四条西洞院の着物屋さんに寄った。そこには着物のプロの女性がいて、私の着物選びに2時間以上も付き合ってくれた。
 
ファイル 28-1.jpg
 
 さまざまな土地にそれぞれの文化がある。
 少子化を加速させる文化とはどういう文化なのだろうか。“都市化”などと簡単に片付けないでちょっと考えてみる必要があると思う。

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 都道府県の合計特殊出生率をみると、2003(平成15)年の場合、全国値1.29を上回る都道府県は36、下回るところは11であった。最も高いのは、沖縄県(1.72)であり、以下、福島県(1.54)、鳥取県(1.53)、佐賀県(1.51)の順となっている。最も低いのは、初めて1を割った東京都(0.9987)であり、以下、京都府(1.15)、奈良県(1.18)、北海道、千葉県及び大阪府(1.20)の順となっている。


いつでもどこでも専業主婦、パート、常勤

 「日本の音楽教育学の再構築に関する基礎的研究」という科学研究費補助金の共同研究を分担しているので、きょうは、子どものお稽古ごとに関するアンケート資料を集めた。

 2003年度実施の「第2回子育て生活基本調査 (幼児版)」(ベネッセ未来教育センター)を見た。習い事についての調査項目にも専業主婦、パート、常勤という母親就労状況別の利用率が出ている。


Child Research Net 「第2回子育て生活基本調査(幼児版)」-報告書本文-

 いつでもどこでも、この3区分だ。
  
 アンケートをチェックしていて驚いたのは、回答者は母親が100%で、父親、祖母、祖父、その他はゼロであること。ちなみにこの調査のサンプル数3,477。せっかく表まで作ったのに、父親~その他は全部斜線である!

ファイル 27-1.jpg
 もう1つ気になったのは、バレエ・リトミックがひとくくりになっていることと、音楽教室と楽器が別であること。私のやっているようなピアノを主とした音楽教室はどちらに入るのだろうか・・。

第2回子育て生活基本調査(幼児版)第4章 子どもへの期待と習い事

 男女共同参画時代というのなら、たとえ専業主夫が限りなくゼロに近くても、とりあえず男も専業主夫、パート、常勤に分けてみるといい。そうしたところから変えていかないと人々の意識を変えていくのは難しいと思う。

 最近、所帯を維持するために最低限必要なお金さえ稼げない男が増えているという。夫の稼ぎが悪くなれば、妻も働きに出るしかない。そういったカップルがどんどんと増えて、専業主婦をしているのは稼ぎのいい特別な男を夫にもつ1%の女だけになったとしよう。その女たちはたぶん優越感に浸るだろう。でも、反対に専業主夫が1%にいたとしても、稼ぎのいい妻をもってラッキーな男だと人々は思うだろうか。

 男女共同参画に必要なのは、制度の改革だけではなくて、根深く巣食う意識をどう変えるかであって、たぶんこちらのほうがずっと難しいに違いない。


全員、変わり者?

 私は自宅がある東京と、勤務校(京都女子大)がある京都との往復生活をしています。多くの方々が「大変でしょう。」と口を揃えて言います。ここ数日だけでも何人もの人に言われました。

 でも、前任校(富山大学)に勤めていた時期も含めて、こうした生活を10年もやっていると身体が慣れてきます。一週間に一往復するだけですから、毎日通勤1時間半の人よりラクだと思います。

 東京を始発の“のぞみ”に乗って出ると、一時間目の講義に間に合います。大学が京都駅から至近の距離にあるおかげです。
 反対に、最終の“のぞみ”で出ても、その日のうちに四条河原町のマンションまで徒歩でたどり着けます。

 また、京都駅前のバスターミナルを23時に出るレディーズドリーム京都号に乗れば、朝6時40分に東京駅に着き、大手町から地下鉄に乗れば12分で早稲田。駅前のシャノアールでモーニングを食べて自宅に戻ってもまだ7時台です。


 京都発、上りの東海道新幹線のダイヤです。山の手線並みでしょ。

ファイル 26-1.jpg 東京・京都間の2時間20分は、一仕事にも一眠りにもちょうどよい時間ですよ!

 「洋服はどうしてるの? 」「本はどちらに置いてあるの?」多くの方々が私に尋ねます。こうした生活をすると無駄や混乱が多くなるのが普通なんですが、おそらくそれを解説すると一冊の本になってしまうぐらい、私には秘密のコツがあります(笑)。

 昨春、京都女子大の教育系に採用された私を含む女性教員3名全員がこうした遠隔生活をしています。世間ではどの程度いるんでしょう。1%だと「まったく了解不能の存在」、3%だと「変わり者扱い」、8%になると身近な話題という感覚が抱かれるらしいですね。

 今年の夏、東京での仕事は全部夏休みにして、お盆明けまでずっと京都にいることにしました。避暑という意味では最悪ですけど・・・。