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 このノートブックは、深見友紀子が原告となった裁判・最高裁パートナー婚解消訴訟の補足説明としてスタートしました。裁判の内容を知らないと理解しにくい文章があると思いますので、興味のある方は、下記サイトまでアクセスしてくださいますようお願いします。
http://www.partner-marriage.info/

 2009年以降のノートブックは、「ワーキング・ノートブック」に移転しました。

supporting bodyについて

 昨日のノートブックでsupporting bodyという用語を使いましたが、この用語は、中西準子さんのサイトでみつけました。

 http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak351_355.html

 以下に引用します。高い地位にのぼりたいと思いつつ、大学ではあらゆる雑用を自分でこなし、家では家政婦さんも雇っていない私は、なんだか溜息が出ました。

雑感351-2006.6.26「早稲田大学教授 松本和子さんのこと」

今回の雑感
A. 早稲田大学教授 松本和子さんのこと

総合科学技術会議
 早稲田大学での研究費の不正利用問題が起きているという新聞報道を見ていたが、まさか問題の主が松本和子さんとは思わなかった。ついこの間まで、総合科学技術会議の専門調査会で月に1~2度顔を合わせていた方である。  
 松本さんは総合科学技術会議の議員で、私はその専門調査会の委員だから、重みは全然違っている。議員は、月1回総理大臣出席の会議に出席し、意見を述べる立場で、経済財政諮問会議の議員と同じ位、非常に高い地位である。国会議員と同等な、いや、それ以上、閣僚くらいの地位だと思う。私が務めていた専門調査会委員は、審議会に付属する相談役みたいなもの。そういう違いはあるが、しばしば顔を合わせていた。

ワークショップで
 それ以外には、同じ講演会で講演したことがある。2000年12月14日(平成12年)、NEDO主催のWS(有楽町朝日ホール)で、2001年7月頃から今の研究センターが始めることになるプロジェクト(化学物質総合評価管理プログラム)の内容説明のために開かれたものだった。
 松本さんは、「化学物質影響評価のための遺伝子アッセイ」というタイトルで講演した。そこで、今問題になっている蛍光性希土類錯体をラベルするDNAチップの話しもした。
 その後、化学物質関係の小委員会に一度出席されたことがあり、そこで同席し、また、総合科学技術会議の後先に廊下で会って二言三言交わしたことが2回程度というのが、つきあいのすべてではある。
 そういうつきあいから得た印象は以下の通りである。

1) 総合科学技術会議の専門調査会で印象に残るような発言はほとんどない。発言の回数自体がひどく少なかったと言った方が正確かもしれない。
2) 2000年12月のワークショップでDNAチップのことを話したが、ほとんど始めたばかりというような印象の話しだった。確か(記憶不確か)、最後に3枚程度のスライドを示した。この方法はまだ使えないというような話しをしたし、また、NEDOプロジェクトで提案されていたDNA解析による有害性推定についても否定的だった。
 私は、それまで松本さんの仕事について、全く知らなかったし、また、今回問題になるまで研究内容について興味を持ったことがなかったので、錯体の専門家であることも知らなかったが、今回問題になって以後netでいろいろ調べて見ると、99年頃から大型研究費をとり、2001年には大きなプロジェクトを立ち上げ、また、03年にはventure企業まで立ち上げている。
ところが、私は、2000年末の講演を聴いて、“DNAを手がけ始めたばっかり、自信なさそう”という印象を持った。随分、印象と現実は違ったことになる。不思議な感じである。

3) 総じて、松本さんのひととなりを次のように描いていた。
 清楚な美人(とても素敵!)。典型的な日本人的で控えめな女性。質素で誠実。この印象と研究費流用とも余りにもかけ離れている、これほど印象がずれるものだろうか。

女が偉くなるとき
 松本さんは、06年からIUPACという学術協会の副議長を務め、08年から会長を務めることになっていたと新聞は報じている。IUPACは化学の分野では非常に権威のある学術機関らしい。こういう高い地位に女性がどんどん進出することはとてもすばらしいことだ。ただ、端で見ているとはらはらすることもある。
 松本さんの場合と特別関係あるということではないし、まして、研究費の不正利用とは無関係だが、松本さんのように高い地位についた女性が問題を起こしているので、高い地位につく女性について、常々心配していることをここで書いておこうと思う。
高い地位につくと、日本ではやたらと忙しくなる。講演、委員会、国際会議など。
 私のような立場でも、もし頼まれる講演や会議への出席をすべて引き受けていると、すべての日を割いても間に合わないようになりそうだから、総合科学技術会議の議員などになるとそれは、多分大変なものだと思う。講演の内容を聴きたいだけでなく、情報をとりたいに加えて、偉い人に見て貰いたいという考えの依頼が舞い込むだろうと推察する。総理大臣来るとか、天皇陛下ご臨席に近い感覚である。
 また、最近は国際会議がやたらと多い。日本を代表して話せという要求も相当な数になるに違いない。
 それは、男女を問わず大変なことだが、女の場合には、特別に大変になる事情がある。国際会議に出席し、多くの講演を引き受けて、尚、新しい研究成果を出し続けるためには、その人をサポートする一団の人々がいないと無理である。つまり、大学なら研究室や若い教授や助教授、企業では、その中の組織。男の人で高い地位についている人は、そういうsupporting bodyを持っている場合が多い。
 そこが、研究成果を出し続け、トップに供給する。妻もまたsupporting bodyの重要な構成員であり、服装や食事にも気を遣う。しかし、女の場合には、多くの人がsupporting bodyを持っていない。一人で出てきている。助教授もいないということさえある。極端に言えば、一人ぼっちで勝負しなければならない。厳しさが全然違う。
 もうひとつある。男の同じ地位にある人に比べて、女は比較的に年齢が低い。女性の社会進出が遅れたため、年齢の上の方に女がいないので、若い人が起用される。若ければ研究もまさに現役として頑張らなければならない。体力もあるし、また、地位に応じて研究費も入ってくるので(これも日本的特徴)若いときから研究費に恵まれるという良い面もあるが、supporting bodyが弱いので、研究費は潤沢だが、研究そのものは手薄になりがちである。
 もちろん、多くの女性達がそのことで悩み、注意し、懸命な努力を続けていると思う。個人個人は努力で抜け出すとしても、社会総体としては、何かが起きる素地がある。地位の高い女性達を本当にサポートする社会的な仕組みができるまでの間は、女性達はどちらかを少しあきらめるくらいの覚悟が必要な気がする。
 形式的な会議とか挨拶のような仕事は、徹底的に断るか(嫌われても嫌われても、変人扱いされても)、研究の第一線からは身を引くかである。個人的には、前者を勧めたい、つまり変人の勧めである。