深見友紀子 最高裁・パートナー婚解消訴訟 オフィシャルサイト

本件に対する法律関係者の論考
判決直後から2005年末まで

「猫の法学教室」《当時》の掲示板への mizumoto さんの投稿「婚姻外の男女関係の一方的解消による不法行為の成否」に対する私のコメント

 この文章は、猫の法学教室の掲示板に書かれたmizumotoさんという人とこのサイトの管理人とのやり取りです。
 mizumotoさんが最初にこの掲示板に投稿したのは、2005年6月9日。本訴訟に関する水野紀子さん(東北大学教授)の解説が掲載されている『平成16年度重要判例解説』(有斐閣)が発刊された直後ということになります。
 元の水野紀子さんの解説に対して私はコメントを書きましたので、mizumotoさんの見解に対するコメントはここでは省略しますが、この文章を水野さんの原文と見比べてみてください。

 確かに水野さんの文章の引用部分には「 」が付いています。しかし、私は水野さんの解説を読む前にこのmizumotoさんの文章を見たので、「性や身体は人間の尊厳にかかわるものですから、契約による強制(例えば腕1本を売る契約を強制する)はできないというわけです。」という文章も原文に書いてあるのかと思い、東北大学教授でしかも法学者がこんな乱暴な表現をするのかと目を疑いました。この一文も水野さんが書いたものと誤解する人がいるに違いありませんし、ネット上の文章はコピー&ペーストが簡単にできるので、水野さんが書いたものとして流布する可能性もあるでしょう。私が水野さんだったら、おそらく気分が悪いです。先達への尊敬の表明は、"尊敬する、水野紀子教授"と書くことではないと思います。

 以前、「夫婦別姓を待つ身の溜息」サイトに次のようなことが書かれているのを読んだとき、私こそ驚きました。参考まで。


 http://fb-hint.tea-nifty.com/blog/2005/01/post_10.html

 ごめんなさい、TBではないのですが、どこに書いていいかわからなかったので…「最高裁・パートナー婚解消訴訟 オフィシャルサイト」のコラムにすごいことが書いてありました。
 「婚姻制度は旧姓の保持という両者の利害が衝突した場合をあらかじめ想定していて、公平性の観点から、全く新しい姓を名乗ることを認めている」のだそうです。いわゆる夫婦新姓ってやつ??!いつの間にそんな制度が??!! 投稿者: 待子 (January 28, 2005 10:10 AM)


 また、mizumotoさんの文中、"「両当事者の合意に基づく限り、どのような関係を形成するかは当事者の自由ですから、これを規制する必要がない反面、これに特別な法的効果を付与する必要もない」わけです。(多数説・判例タイムズ1169号145頁)"という記述がありますが、元の判例タイムズを見ると、「両当事者の合意に基づく限り、いかなる関係を形成するかは、原則として当事者の自由であって、これを規制する必要もないが、これに特別な法的効果を付与する必要もないという見解を採るものが多い」となっています。

 この2つは大違いです。

 mizumoto さんの投稿は、学部のゼミ以下の論述が法科大学院レベルにも横行している例です。水野さんは研究者としてはmizumotoさんを相手にはしなくていいですが、教育者としてはこの違いに対する軽視を戒める立場にあると私は思います。

 学生の勉強会であるならば、"素直に考える"(文中ママ)のではなく、様々な可能性を挙げながらそれぞれについて評価をすることに意味があるはずです。自分の判断をあげるだけなんて、勉強会にもならないです。

 社会的な背景が変わり、女性の地位があがったためにこの判決が出たというのなら、ある意味画期的な判決でしょう。でも、誰もそれには触れていない。

 最後に私が最も看過できないのは、「ラクに関係を築くことができるなら、ラクに解消できるというのが論理的というワケですね。」という一文です。こんなラクではない男女関係がなぜ16年も続いたのだろうというところから出発しない限り、この事件を読み解くことはできないはずですけど・・・。

 「尊敬する○○様〜、素直についていきますわぁ」と誤読して信じてついていったら、いつの間にか"公序良俗"さえ変わってしまっていたということにならなければいいのですが・・・。このmizumotoさんに限ったことではありませんよ。

(2008年4月8日 若干加筆修正)

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深見友紀子(ongakukyouiku.com)

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