深見友紀子 最高裁・パートナー婚解消訴訟 オフィシャルサイト

本件に対する一般の人々の反応
Part 1

「歌うたいのカケラ」に対する私のコメント

 「一般の人々の反応」第4弾、このエイサクさん(以下Eさんとします)のコメントは真摯に書かれていて、最もこの事件の本質がわかっていると思われる例です。そもそも「婚」とは何か、〈何をもって婚姻意思とするかという点について幾ばくかの論評を展開する〉と言いながら、きょう現在(2005年5月3日)、まだ回答できないことによってもそのことが理解できます。この事件が投げかけるテーマはかなり深く、そう簡単に論評できることではないと思うからです。

 「一般の人々の反応」のコーナーではいろいろなタイプのコメントを取り上げた結果、玉石混淆になってしまいました。この事件の論点を捉え違えているという点で「石」であることを際立たせようと、「石」も「玉」も並列することにしました。「石」を「玉」の前に置いたのは、いかに「石」がこの事件の論点を捉え間違っているかということを際立たせるためです。「石」3つが続いた後の4番目という位置づけでEさんには大変申しわけありません。もちろん「玉」か「石」かを判断するのは読む方々ですが・・・。

 以下、Eさんのコメントは〈  〉にしました。

 Eさんの文章を読んでまず最初に感じたのは、私の場合、一般的な事実婚の実践者が法律婚にどれだけ近いかをアピールして、〈債務履行に国家権力の助力を得たい〉のではなかったということです。(この「債務履行」は賠償請求と同義にとりましたが、ひょっとしたら違っているかもしれません。)私は裁判の過程でたたき台となる書面の執筆を代理人である弁護士に任せ、メールで送ってもらった草稿を何度か推敲して、最終的に書面にしていきました。したがって、Eさんが〈答弁書などをみると、事実婚認定の問題を争点としている〉と思ったのならば、弁護士がそういうスタンスであったということだと思います。私自身は、そうした書面のなかで、初めて"法的保護"などという言葉を知りました。

 私は法律婚がその継続過程で得られる権利を求めてはいませんでした。もし、得た権利があるのだとすれば、2度の出産時の入籍により相手の勤める会社の健康保険組合から相手がもらった出産補助金だけです。

 しかし、Eさんがいう〈実質的(婚姻)意思〉に多様化、個別化、個性化を求めていましたし、私と相手との関係は「婚」であると思っていました。

 婚姻はその意思があれば始まり、意思がある限り継続します。このパートナー関係は16年間に及び、2回の妊娠、養育に関する取り決め、相手がジェンダーの講義に参加し、自らの家族観を語ったことなどの事実によって、意思があると考えられます。継続には意思があればいいのです。(相手が裁判の過程でこの意思を否定したのは戦略上当然かもしれませんが、否定すればするほど、なぜこの関係が継続していたのかが疑問となって残ると思います。)

 しかし、関係の解消は両性の自由な意思ではできない部分があります。だから、私は提訴しました。このサイトを開いた直後、2004年11月末に書いた コラム Part 1 No.1 で、20代後半から40代半ばという人生で最も充実した時期を共に過ごしてきたのに、話し合いをする余地も一切与えず、一方的に手紙を渡して関係を解消した行為を許せなかったのです、と私は書きました。もう少し具体的に言えば、解消には多くの法律的な取り決めが必要になってくるにもかかわらず、相手がそれをしなかったために、その態度の不法 (不当) 性に対して損害賠償請求をしたということです。

 実際に、相手が再婚をする意思を告げた2日後から今日に至るまで長女は父親を一切無視しており、親権者とは名ばかりです。地裁に提訴する前に、施設から出すのであれば長男への面会権を欲しいと、弁護士を通じて要求をしたことがありましたが、相手が拒絶したという事実もあります。さらに、私が東京・新宿区に所有する土地・家屋、長男出産後に蓄えた金融資産などに対して子どもの相続が発生し、子どもを通じて親権者である相手が介入してくる可能性が多々あるのです。些末な例かもしれませんが、幼少の頃私が祖父から買ってもらった、鍵盤がすべて象牙の高級ピアノも現在まだ相手の私設文庫にあります。ここに挙げたものは、〈パートナー関係という主観的な概念〉から生じた結果ですが、法律婚かと見間違えるほどの事柄です。こうした事柄が発生することはとりもなおさず、私と相手との間に婚姻意思を伴った客観的関係性が生じていた証拠であると思います。

 私が最も主張したいのは、「関係の継続」と「関係の解消」は分けて考えるべき、まったく別の次元のものであり、制度に縛られない関係を解消する際に、法の介入が必要である場合もあるということです。多くの方々が、継続と解消とを混同していたり、あるいは混同していることにも気付いていないと思います。

 また、"法的保護"という言葉も、現在では曖昧な弁護士言葉となっていて、"法的保護"=慰謝料や養育費の支払いという解釈になっていることに憤りを感じています。"法的保護"とは、本来、関係の継続において国家権力の助力を得ることができるということであるべきではないでしょうか。

 以上が、〈制度に縛られない関係を求めたのならば、関係破綻(解消)に際して制度を利用するなよ〉というEさんの言葉に対する私の回答です。

 私はこの裁判を〈事実婚の法的保護に資する〉つもりで行ったのではありません。まず、私は現在のパートナーとの関係にこの事件での教訓を生かしていきたいと思っています。もし、Eさんのような方々がこの事件から得たものがあれば、それは必ずや事実婚や実質的な夫婦別姓の推進に役立つはずに違いありません。

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深見友紀子(ongakukyouiku.com)

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