深見友紀子 最高裁・パートナー婚解消訴訟 オフィシャルサイト

コラム Part 1

No.2 裁判では倫理は問われない

 相手は、本裁判において弁護士をたてませんでした(本人訴訟です)。
 もし、彼に弁護士がついていたら、定石どおり別居、独立経済であることなど、婚姻(内縁を含む)を成立させる要件を満たしていないことを強調してきたでしょう。
 しかし彼は、16年間脅迫され続けてきたという主張を終始一貫して繰り返しました。その結果、答弁の大部分は関係があったか、なかったかという事実関係の不毛な応酬に追われてしまったのです。
 相手の主張は次第にエスカレートし、上告受理申立理由書[PDF形式, 1.38MB] は次のような文章で溢れていました。


 ○○ 相手の名前
   ××× 新しいパートナー、相手と結婚した女性

  •  本事件の上告人と被上告人との関係が、好奇心と性愛の赴くままに任せた場当たり的、刹那的、享楽的な関係であり、その結果激しい対立関係も生じ、お互いに傷つけあうに至っている。
  •  関係が、本来の愛情と信頼に基づくものでなかった。(2ページ)
  •  上告人と被上告人との〈関係〉が破綻していた〈関係〉であったことは明らかであり、両者提出の証拠を見るに、その事実は通常人ですら、疑いを差し挟む余地はない。(3ページ)
  •  上告人と関係自体は×××と結婚を決意した時点から百歩ゆずり、出会いの二年前に遡った時点でみたとしても、すでに破綻している。(4ページ)
  •  両者の関係は、それが解消されたとしても、両者またはどちらか一方が何らかの苦痛や精神的ショックを受けるといったような、そうした状況には全くなかったのは証拠からも明らかである。(5ページ)
  •  上告人○○が、百歩譲って仮に結果として何らかの加害を被上告人に与えたと仮定したとしても、上告人は被上告人の日頃の言動からそれを予見できる状況にはまったく立たされておらず、よってその責を負うにはあたらないとすべきである。(5ページ)
  •  両者の険悪さを内包した関係の実態、そうした原因の多くが被上告人によってもたらされたものである。(5ページ)
  •  両者間においては、権利義務関係は勿論のこと、共同の目標や目的、または計画など、どちらかが欠けることにより支障をきたす事柄は生活上でも、その他においても一切無く、また、旅行や娯楽といった精神的な楽しみを共有するための予定や子供の将来の進路など、そうした趣味や夢などに代表される精神生活においても共通性がないことから共有はみられない。
  •  なんらかしらの期待が発生する関係にはなかったことが理解できる。(7ページ)
  •  そもそも両者においては個別案件ごとに契約行為、または契約行為に準じる対応をおこなってきたがゆえ、それぞれについては、双方に権利義務が発生し、相応の期待が発生するものの、「関係」自体は何ら期待を発生させるものではない。(7ページ)
  •  こうした社会常識から著しく乖離した常人には理解しがたい関係を解消することが、なぜ不法なのか。(8ページ)
  •  「特別の他人の関係」として法的保護を与えるに値しない、崩壊した、しかも善良な風俗に反した関係であったと判断される。(10ページ)
  •  「特別の他人の関係」にすら該当しない腐敗した関係であったということは疑う余地のないものである。(11ページ)
  •  上告人○○と被上告人友紀子との関係は、そもそも契約関係によって、もしくは相互信頼に基づいて16年間にわたり続いたものではなく、一方で、16年間にわたり続いた関係であるからとの理由をもって、その関係を契約関係や相互扶助の関係とみなしうるものでもない。なぜなら、たとえ関係が16年にわたり断続的に続いた事実が軌跡として残っていたとしても、そこにはなんら必然性が伴わないからである。(12ページ)
  •  〈関係〉は最初から破綻していたのである。(12ページ)
  •  そもそも関係自体に何らかの価値を見出すことはきわめて困難であると判断されるべき関係である。(12ページ)
  •  こうした破綻した異常な関係を解消し、×××と婚姻関係を結んだことは、道義上、社会上、かつ基本的人権という法理解のうえに立っても、何人からも責めを負うものではないことは明らかである。(12ページ)

 2001年5月2日の手紙と比較してみてください。
 裁判の過程では倫理は問われないのです。もちろん、判決も相手の倫理的な側面には一切触れてはいません。「好奇心と性愛の赴くままに任せた場当たり的、刹那的、享楽的な関係」「社会常識から著しく乖離した常人には理解しがたい関係」「崩壊した、しかも善良な風俗に反した関係」「腐敗した関係」「破綻した異常な関係」といった言葉を並べると同時に、関係そのものが無効であると堂々と主張できるパートナー婚も、たとえ内実はなくなっても関係性だけが残る法律婚も、どちらも虚しいです。
 また、現在の法曹界は、法律から逸脱しているか、していないかの境界をどこに定めるかという点にのみ腐心しているように思います。これも虚しいです。

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深見友紀子(ongakukyouiku.com)

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